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たむらしげるとの奇妙な偶然性 [マンガよみ]


「たむらしげる」という絵本作家がいる。ご存知ない方は、Amazonとかでちらっと見ていただくと
「あー見たことあるかも」となるかも知れません。
僕がMacをはじめて買ったとき(PowerMacの7500だった)迷わず買ったCD-ROMが

PHANTASMAGORIA ファンタスマゴリア)だった。

何故、そうなったかというと、そもそもその前から、たむらしげるの作品と僕との間に奇妙な偶然性が重なったが故に、というのが理由といえば理由だ。

最初に出合ったのは「水晶狩り」というマンガで、それも本屋で買ったのではなく、近所にあった裏寂れたショッピングセンターの中の米屋に週刊誌や、わずかばかりのコミックと一緒に並んでいたものだった。いつもジャンプを買うときに他のコミックより一回り大きなサイズのそのマンガをチラチラと横目で見ているうちに、つい買ってしまったのだ。タッチはシンプルで、どちらかというとカットに近い表現だった。

次に出会ったのは、デザインの学校に通っていたとき。創作理論実習の課題で「絵本の絵を擬似的に立体に表現する」というテーマが出て、渋谷のLOFTで絵本を探しているときに「アリとスイカ」という絵本を手に取ったら、それが、たむらしげるの絵本だった。線は水晶狩りと同じだが、パントーン(色を塗るのではなく貼るフィルム)とカラーインクで着彩されていて、発色がよくとてもきれいで目を引いた。

「たむらしげる」という名前が僕の中に確実に刷り込まれた。

 

デザインの勉強をしているとき、「イラストレーション」という雑誌があってよく買っていた。あるとき「たむらしげるの世界」という特集が組まれ表紙もたむらしげるのイラストだった。

正直、来たーと思った。自分がいいな、と思っていたモノが大々的に取り上げられたのが素直に嬉しかった。

その特集で、たむらしげるの使っている画材に「Macintosh」と記載されていた。
まだコンピュータで絵を描くということなんて未知の世界だった当時、それは魔法の様に見えた。
今ではデジタルなものをフィルムに出力したり、データをそのまま印刷にまわしたりできるが、その頃、そんなことができるはずもない。
で、たむらしげるはどうしたかというと、モニターに映し出されたイラストをポジフィルムで撮影し、それを最終的な原稿として入稿していたのだった。絵の具やパントーンでは再現できないRGBの彩度と発色を何とかして印刷で再現しようと、そういった手法にチャレンジしていたのだ。

その当時の作品には他にもドットの荒いカラープリンターでプリントしたものもある。もともと銅版画もやっていたので、狙ってそういう表現をしていた。

学校も卒業し、社会人になり椎名誠の本などを好んで読んでいたとき、「アド・バード」が出版された。・・・その表紙の絵がたむらしげるだった。

もう僕が追いかけているのか何なのかよくわからなくなってきた。

会話がカラッとしていて、ユーモアがあって、絵がきれいで洒落ている。
たむらしげるの世界感はずっと好きで居続けられる。そう思い、冒頭のPHANTASMAGORIAを購入したのだった。

話はここで終わらない(長文ですいません)。一昨年ある仕事で、クライアントが

「今回は有名イラストレーターの作品をいくつか使いたいと思っているんです。まあ、有名といっても名前は知られていないと思いますが。これは私の個人的な趣味も入っちゃってるんですけど(笑)」

と言った。そのイラストレーターが、たむらしげるだった。

「僕も大好きなんです」と、クライアント担当者と意気投合したことで、以来ずっとお付き合いさせていただいている。

 

そして、今。

近所の古本屋に娘を連れて立ち寄ったとき「アリとスイカ」が売っていた。15年ぶりに再びめぐり会えたその本は、娘のお気に入りになっている。

 

・・・・・ウソみたいでしょ。でも脚色なく全部ホントの話です。

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たむらしげるスタジオ通信 http://www.tamurashigeru.com/
TAMURA's WORLD http://www.daijobu.co.jp/home/tamu/t_index.html


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コメント 6

はじめまして。
大学時代、『アタゴオル物語』など読んでいたのですが、絵本の世界を散歩できるという感じのCD-ROMが流行りだした(?)頃に、私はPHANTASMAGORIAのCD-ROMを購入しました。
ユトロさんの音楽とたむらしげるさんの絵に心奪われ、購入した絵本(第1巻だけですけど)は、今でも心和ませてくれます。

シンプルな絵についつい『私でも描けるかな』などと思ってしまいますが、やはりどこか違うんですよね。
小手先のテクニックじゃなく、絵そのものを色んな手法で表現しようとしているんだなぁ、などと記事を読んで感じました。

ところで、フープ博士の絵、似てますね。
by (2004-12-18 08:10) 

miron

papaさん、私も「水晶狩り」もっています。
1986年か1987年に、
オープンして間も無い、遊べる本屋 ヴィレッジヴァンガードで見かけ、
サイン入りだったので、迷わず購入しました。
その透き通ったような世界、クジラ。
この本は、心のなかの特別な場所にあります。
by miron (2004-12-18 09:03) 

papa007_

>くらげカンパニーさん、はじめまして『アタオゴル』も好きです。そうそうユトロさんの音楽も静かに聴いていられてイイんですよね。CDそのうち手に入れたいと思っています。
by papa007_ (2004-12-19 08:55) 

papa007_

>miron さん、おお、お持ちですか。また共通項が。クジラの跳躍の別角度の話が「スモール・プラネット」というマンガに「ガラスの海」というタイトルで入ってます。こちらには「銀河の魚」も収録されてます。
by papa007_ (2004-12-19 09:06) 

XPになってから(すみませんwinユーザーです)ファンタスマゴリアが
再生できなくなってしまいました。
改訂版が早く出ればいいのにな。
by (2005-09-03 19:40) 

papa007_

●ゆきさん
あららー、OSが変わるとそういう弊害もでちゃうんですねー
僕のファンタスマゴリアなんて、クラシック環境での再生が前提の
とても古いものです(笑)色数を32000色にしてくださいなんて注意書きがあったり・・
by papa007_ (2005-09-04 02:03) 

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